交通事故に遭ってしまい、肉体的にも精神的にも傷ついた被害者に、お金という形で賠償するのが示談金です。
お金で失われたものや時間が帰ってくるわけではありませんが、せめてお金くらいは、自分の被害に見合った額をもらいたいものですね
しかし、保険会社任せにしていたら、納得のいく金額からはかけ離れた示談金しかもらえなかったという例もあるようです。
今回は相手の保険会社から提示された交通事故示談金を自分の事故に見合った適正な示談金額に増額させるポイントについて解説します。
保険会社から提示された示談金の項目を確認する
示談金は交通事故の最終的な解決金ですから様々なものが含まれ、個々の事故のケースによってその項目は異なります。
入院・通院治療費だけではなく、病院までの交通費、入院していた時に必要だった雑費、装具・器具等購入費、自動車修理費、台車利用料、休業損害、障害慰謝料、逸失利益、葬儀費用など、様々な項目を請求することができます。
相手の保険会社から示談金の計算書が提示された場合は、自分が請求できる項目がきちんとすべて含まれているかどうか確認しましょう。
また、これは請求できないだろうと思うものでも、言ってみたら意外に認めてもらえることもあるので、交通事故関連で使ったすべてのものについてレシートや領収書を残しておくことも重要です。
自分の過失割合を下げられるか検討する
交通事故の際、「7:3で向こうに非があった」というような会話を聞くことがありますよね。どちらがどれくらい悪いかという過失割合はどのように決定されるか知っていますか?警察が決めていると考えている人もいるのではないでしょうか?
実は示談の場合の過失割合は、過去の交通事故の裁判の判例をまとめた『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』という本に基づいて、保険会社同士の話し合いで決まります。
交通事故で被害者にも過失がある場合、その割合によって加害者側の負担損害額は減額されるので、加害者側の保険会社は大抵の場合、加害者に有利なように解釈して過失割合を提示してきます。
交通事故の過失割合は示談金に大きく影響してくるので、過失割合がどうも納得がいかないと感じたら早めに交通事故に強い弁護士に相談してみましょう。弁護士ならその交通事故の状況をきちんと把握した上で、相手の保険会社が提示してきた過失割合が本当に適切なものなのか判断してくれます。
保険会社の提示金額は適正ではない?3つの基準
交通事故の示談金の中に含まれている休業補償や慰謝料には3つの基準があります。どの基準を使われるかで示談金額に差が出ます。
自賠責基準
自動車・バイクに乗っている人なら強制加入の自賠責保険の基準です。
交通事故被害者を守るための最低限の補償額で支払金額には制限があります。
任意保険基準
任意保険の基準は現在各保険会社によって違い公表されていませんが、自賠責の基準に近い事故の補償額として十分とは言い難い基準額となっていることが多いです。
弁護士基準
示談金交渉で裁判になった際の過去の判例が基準となっているのが、弁護士基準と呼ばれるものです。
この3つの基準の中ではもっとも高額で、交通事故被害に対して一番妥当な金額ですので、示談金の大幅な増額を求めるなら、この弁護士基準で保険会社と交渉してくれる弁護士に依頼しましょう。
後遺障害認定を保険会社任せにしない
治療をしてもこれ以上の改善が見込めなくなると、医師から「症状固定」と診断されます。
そこで以下の症状に自分が該当する場合は、後遺障害診断書を取得して後遺障害認定を受けます。
自賠責保険-後遺障害等級一覧表
介護を要する後遺障害の場合の等級及び限度額 | ||
等級 | 介護を要する後遺障害 | 保険金(共済金)額 |
第一級 | 1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2. 3. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
4,000万円 |
第二級 | 1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
3,000万円 |
【備考】各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。
後遺障害の等級及び限度額 | ||
等級 | 後遺障害 | 保険金
(共済金)額 |
第一級 | 1. 両眼が失明したもの
2. 咀嚼及び言語の機能を廃したもの 3. 両上肢をひじ関節以上で失つたもの 4. 両上肢の用を全廃したもの 5. 両下肢をひざ関節以上で失ったもの 6. 両下肢の用を全廃したもの |
3,000万円 |
第二級 | 1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になったもの
2. 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの 3. 両上肢を手関節以上で失ったもの 4. 両下肢を足関節以上で失ったもの |
2,590万円 |
第三級 | 1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になったもの
2. 咀嚼又は言語の機能を廃したもの 3. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 4. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 5. 両手の手指の全部を失ったもの |
2,219万円 |
第四級 | 1. 両眼の視力が〇・〇六以下になったもの
2. 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 3. 両耳の聴力を全く失ったもの 4. 一上肢をひじ関節以上で失ったもの 5. 一下肢をひざ関節以上で失ったもの 6. 両手の手指の全部の用を廃したもの 7. 両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
1,889万円 |
第五級 | 1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になったもの
2. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 3. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 4. 一上肢を手関節以上で失ったもの 5. 一下肢を足関節以上で失ったもの 6. 一上肢の用を全廃したもの 7. 一下肢の用を全廃したもの 8. 両足の足指の全部を失ったもの |
1,574万円 |
第六級 | 1. 両眼の視力が〇・一以下になったもの
2. 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの 3. 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 4. 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 5. 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 6. 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 7. 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 8. 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの |
1,296万円 |
第七級 | 1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になったもの
2. 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 3. 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 4. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 5. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 6. 一手のおや指を含み三の手指を失ったもの又は親指以外の四の手指を失ったもの 7. 一手の五の手指又は親指を含み四の手指の用を廃したもの 8. 一足をリスフラン関節以上で失ったもの 9. 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 10. 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 11. 両足の足指の全部の用を廃したもの 12. 外貌に著しい醜状を残すもの 13. 両側の睾丸を失つたもの |
1,051万円 |
第八級 | 1. 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になったもの
2. 脊柱に運動障害を残すもの 3. 一手の親指を含み二の手指を失ったもの又は親指以外の三の手指を失ったもの 4. 一手の親指を含み三の手指の用を廃したもの又は親指以外の四の手指の用を廃したもの 5. 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの 6. 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 7. 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 8. 一上肢に偽関節を残すもの 9. 一下肢に偽関節を残すもの 10. 一足の足指の全部を失ったもの |
819万円 |
第九級 | 1. 両眼の視力が〇・六以下になったもの
2. 一眼の視力が〇・〇六以下になったもの 3. 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 4. 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 5. 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの 6. 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの 7. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 8. 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 9. 一耳の聴力を全く失ったもの 10. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 11. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 12. 一手のおや指又は親指以外の二の手指を失つたもの 13. 一手の親指を含み二の手指の用を廃したもの又は親指以外の三の手指の用を廃したもの 14. 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの 15. 一足の足指の全部の用を廃したもの 16. 外貌に相当程度の醜状を残すもの 17. 生殖器に著しい障害を残すもの |
616万円 |
第十級 | 1. 一眼の視力が〇・一以下になったもの
2. 正面を見た場合に複視の症状を残すもの 3. 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 4. 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 6. 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 7. 一手の親指又は親指以外の二の手指の用を廃したもの 8. 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの 9. 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの 10. 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの 11. 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
461万円 |
第十一級 | 1. 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2. 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3. 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 4. 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 6. 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 7. 脊柱に変形を残すもの 8. 一手の人さし指、指又は薬指を失つたもの 9. 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの 10. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
331万円 |
第十二級 | 1. 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2. 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3. 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 4. 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの 5. 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの 6. 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 7. 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 8. 長管骨に変形を残すもの 9. 一手の小指を失つたもの 10. 一手の人さし指、中指又は薬指の用を廃したもの 11. 一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったもの又は第三の足指以下の三の足指を失ったもの 12. 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの 13. 局部に頑固な神経症状を残すもの 14. 外貌に醜状を残すもの |
224万円 |
第十三級 | 1. 一眼の視力が〇・六以下になったもの
2. 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの 3. 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 4. 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 5. 五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 6. 一手の子指の用を廃したもの小指 7. 一手のおや指の指骨の一部を失ったもの 8. 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの 9. 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失ったもの 10. 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの 11. 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの |
139万円 |
第十四級 | 1. 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
2. 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 3. 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 4. 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 5. 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 6. 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの 7. 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの 8. 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの 9. 局部に神経症状を残すもの |
75万円 |
【備考】
- 視力の測定は、万国式試視力表による。屈折異状のあるものについては、矯正視力について測定する。
- 手指を失ったものとは、おや指は指節間関節、その他の手指は近位指節間関節以上を失ったものをいう。
- 手指の用を廃したものとは、手指の末節骨の半分以上を失い、又は中手指節関節若しくは近位指節間関節(おや指にあっては、指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。
- 足指を失ったものとは、その全部を失ったものをいう。
- 足指の用を廃したものとは、第一の足指は末節骨の半分以上、その他の足指は遠位指節間関節以上を失つたもの又は中足指節関節若しくは近位指節間関節(第一の足指にあつては、指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。
- 各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。
ここで、相手の保険会社に申請を任せる「事前認定」という手段をとれば、必要な書類などすべて保険会社の方で用意してもらえるので、被害者側はとても楽だというメリットがあります。
しかし、保険会社は業務の一環としてこの作業をするため、通り一遍の書類収集しかしてくれず、被害者側が想定していた等級認定がされない可能性があります。
また、交通事故で生活費が圧迫している人にとっては、後遺障害慰謝料もすべての示談が終わるまで振り込んでもらえないというのも辛いですね。
後遺障害認定というのは、等級が少し変わるだけで数十万~数百万円慰謝料が変わってきますから、少しでも上の等級を認定してもらいたいものです。
そこでおすすめなのが、「被害者請求」です。
被害者請求で適正な後遺障害等級を
被害者請求とは、交通事故の被害者側で後遺障害を証明するための必要書類(後遺障害の内容を記載した後遺障害診断書、レントゲン画像、MRI画像等)を準備し、自賠責保険会社や、後遺障害等級を認定している損害保険料率算出機構に直接書類を送付し、審査を受け認定をもらう方法です。
この方法は自分で直接書類を集めなければいけないため、手間がかかりますが、自分で丁寧に必要なものを収集できるため適正な等級認定を受けやすなります。
また、保険会社を通さないため、相手との示談の前に、後遺障害慰謝料が自賠責保険から振り込まれるというメリットもあります。
この時、医師に後遺障害診断書を書いてもらう時に交通事故に強い弁護士に相談することはかなり有効です。
この症状だったらこの検査もしたほうがいい、後遺障害診断書にこのように記載してもらいましょうと、認定に大きな影響を与える後遺障害診断書作成に的確なアドバイスをもらえます。
弁護士に依頼して示談金を増額させよう
交通事故で示談の際、弁護士に依頼することは、なんだか面倒、敷居が高い、と感じる人もいるかもしれません。
しかし、少しでも示談額を少なくして会社の利益を守りたいと考えている保険会社に個人で立ち向かって、自分の当然の権利を守ることはなかなか難しいことです。
そんな時交通事故に強い弁護士なら、示談金を弁護士基準で保険会社と交渉し、適正な後遺障害認定を得るための手伝いもできるため、自分ひとりで保険会社と話をするよりも、示談金の大幅な増額が期待できます。
自分の任意保険に弁護士特約をつけているなら、300万円までの弁護士費用はかかりません。
まずはお気軽に弁護士に無料相談をしてみましょう。